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on ヒーローの不在

 日曜の午後、デートで映画に行って来た。
 観た映画はChristopher Nolanの「Dark Knight」。
 バットマンだ。

 悪党をぼこぼこはっ倒す、疲れがすっと抜ける
 映画を期待していったのがそもそもの間違い、
 ここまで期待を裏切られながらも、ずしりと
 動かされる作品だったとは思いもしなかった。 
on ヒーローの不在_a0016843_0285551.jpg

 

 いわゆる勧善懲悪のヒーローものではないのが理由。
 善の象徴のバットマンは、悪との戦いにおいて
 まったく勝てないのだ。彼の周りには、失うと取り返しが
 つかなくなるものがあまりにも多すぎて、それらが蝕まれて
 いく過程でヒーローとしての「資格」のようなものが消えてしまう。

 その昔、スコットランドの哲学者ヒュームが言った言葉で 
 「人は理性だけではなく、情感に基づく対象への共感があって
  はじめて行動する」ってのがあった。

 恐らく本当のヒーローとは、 
 「外部からの条件や制約からではなく、社会における
  自分の役割に対する意識から自発的に生まれる」もの

 失うまいと必死に悪と対峙するバットマンは、最後まで
 情感を持った人でしかなく、決して求められている
 ヒーローにはなれない。

 そう。気持ちのよいヒーローものを観に行く。
 ところがそんなヒーローにはなれないことに
 主人公自身が気がつく。その事実に彼は苦しみもだえ、
 ヒーロー像を信じて観に行った我々はその彼の姿に
 苦しまされる。
 
 僕は映画のここに動かされた。
 ヒーローを信じる人ほど、揺さぶられるはずだろう。

 閑話休題。
 
 今、クライアントのCSR報告書の制作をしている。
 CSRとは、会社も人と同じように、一社会市民としての
 存在意義があり、利益主義の観点からではなく、
 自らの役割を全うし、活動に責任を持つというもの。
 
 うん。

 ただ企業身体とは、そもそも個人の集まり、情感を
 持った人の集合体でもある。
 そんな人の塊に、上記のヒーローと同じように
 「自発的に行動」することができるのかという疑問を
 持つのは極めて自然じゃないだろうか。。
 ところがこれが面白くて、実は真剣にできると思っている。

 ポイントは、企業体は、人の集まった塊であること。
 
 人っていうのはどうも弱くて、一人ぼっちだとどうしても
 紆余曲折を経る過程で折れてしまったりする。

 が、 
 同じ意識を持ち、理念を信じ、同じ目印、同じ方向を目指して進んでいる横となりの
 仲間を知る瞬間に、一人では到底実現できない推進力が生まれるようになる。
 
 広告制作をやっているTUGBOATの岡康道は、独立する時にこんなことを
 言っていた。
 「起業する仲間を探す時は三つのことが言える。
  1一緒に家族になって起業しよう。
  2一緒にお金儲けするために起業しよう。
  3一緒に熱意と志をもって起業しよう。」 
  
  1は血がつながっていないと限界があるらしく、
  2はお金は結局既得権益だから、最後まで続かない。
  でもそのうちの3は、うまくいくと。
  志は一緒に持ち続けられる原動力に変わるから、と。

  宗教も一緒だね。
    
  だから企業のCSR活動も、実は意外に拍子抜けするぐらい
  成功しているところもある。純粋に役割を全うしたい、
  というそれだけの目標を持った仲間がいるだけで。
  社会的に認められた公人、
  別名ヒーローに一歩近づくのではないだろうか。

  余談だが、googleの企業理念の一つに
  "don't be evil"というのがある。
  あれは"always do good"じゃないからこそ根付くのだと思う。
by eclipseted | 2008-08-19 00:15 | [発insights想]
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