on そもそも僕が建築家を目指した理由
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本来の目的を忘れかけている自分がいる。
ささやきが多いのが事実。
光っている機会は現実。

道をそれても生きたい自分を、
少しばかり毛嫌いする。
しゃっきりのびきらない
タンポポの茎のような自分を
どうしても憎むことはだけはできない。
自分が一番かわいいのだろう。


そもそも僕が建築家を目指した理由

2001年の夏、物理情報科のサッカー青年が
ニュージャージー州の家に泊まりにきていた。
初めての大味海外体験、崇高なMITの見学を経て、
数週間離れていた母国に帰る彼を、ニューアーク国際空港
まで車で送っていった。
フライトは九時直前発だった。
2001年、9月11日。
その日は一日中、雲一つない快晴の日だった。
彼をゲートまで送り届け、ふざけ合って別れの挨拶を
しているときに、僕は彼にアドバイスを一つし忘れた。






「ここのターミナルはマンハッタンのスカイラインが
 すばらしく奇麗なんだ。  ぜひ見ておくとよいよ。」









帰りは眠そうな母が助手席に座り、
運転するのが好きな自分はハンドルを握って高速道路を
快走した。友達を送り届けて一仕事した感に、ほっと
肩をなで下ろしていた。
まだ9時25分。一日の太陽はこれから消費されるのを待っていた。
聞き慣れたラジオ局のDJが、聞き慣れた企画をオンエアで
実況中継している中、左には縁林の緑が果てしない速さで
逆走していく。右にはハドソン川を隔てて、夏のマンハッタン
の目覚めを感じる。










      ... けむり








上空に一筋にのびる灰色の煙が視野に入った。
世界貿易センタ−ビル、双子のうちの一人の、
比較的上層部分からあがっているようだった。
深い空の青と濃い灰色の摩天楼のキャンバスに、
強い境界性を帯びた灰色の筋が昇っている。
音もなく佇むその絵は、身が凍る壮麗なもの。
まるで間違った時間に間違った絵を見ている
ような気分にかられる。

その頃にはラジオのDJが我々の耳となり、声と
なって、錯綜する情報をさらに錯綜して伝えていた。
彼の声には焦りが感じられる。
米国国防総省で火事があった、
ツインタワーは放火のようだ、
飛行機かもしれない、
飛行機はみえたか、
飛行機はどこへいった、


その後すぐに、右も高速道路の縁林の濃い緑の幕に
よって視界が覆われた。インターミッションでもなんでもない。
もう見る事のない世界貿易センターをあとに。

僕がその後覚えているのは、音をキル上空の灰色の戦闘機。
そして九月の朝露が残った緑の芝生だけだ。



マンハッタンにそびえ立つ摩天楼は、多くの人々の
帰着先として、心の拠り所になっている。
帰りの旅路で最初に見ることができる、あの
二本のシルエットは、幾度となく人々を導き返して
くれた。多くの人々にとって、あのシルエットは
「家に帰る方向」という基本概念を作り上げた。

「帰るカタチ」

そんなカタチをある日、そのカタチを作り上げた
同じ人間によって、崩された。
カタチが一瞬にしてなくなる恐怖、不確かさ、
危機、非現実性、瞬間性、性懲りのなさ、
きりのよさ、必然性、意味。
すべてが糸を切られたマリオネットのごとく、
宙ぶらりとなった。なくしたものの代償が、
あまりにも大きすぎた人々に混ざって,
自分も何かを一緒に削り取られた気がした。





















人はたえず進みたがる。


















傷をおったニューヨークは、すぐさま
LMDCを発足。グランドゼロと称する
跡地に追悼の意をこめた、計画の呼びかけを
行った。世界の建築家が、コングロマリットを
形成して挙手した。
しかしながら、人々の思い出と日常が一瞬にして抹消された
あの跡地は、デザイン性が優れている、
機能性がある空間創作を必要としていなかった。
していないし、これからもすることはない。
一筋縄にはいかない再生計画は、これからの人々と
呼応しながら育まれていく、そして同時に
色々な感情、体験、生活に一旦休止符を
打ち直すような、カタチをとる以外の方法では
可能性としてありえない事をみんなが気づいていた。


そんなカタチを作ることを許される人は、
同じ人間として存在し得るのだろうか。
人間的な高い魅力をもち、そこに足を踏み入れる
人として、地球上の何人が認められるのであろうか。
地球上の人で認められるものはいるのだろうか。

まだ自分には見えない世界が、大きな力を
潜めて眠っていることにその時点で気がつく。


僕はそんなカタチづくりと人間の魅力を探すべく、
建築家を目指そうと思った。
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by eclipseted | 2005-01-10 23:31 | [発insights想]
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